- 損益計算書って何?
- 損益計算書がイマイチつかめない・・・
- 損益計算書を簡単に理解したい!
本記事ではこのような疑問や悩み、要望にお応えします。
日商簿記1級資格保有で、監査法人や会計コンサルティング会社で働いてきた経験のある筆者が「損益計算書とは何か?」についてわかりやすく解説します。
本記事を読めば損益計算書に対する理解がスッと頭に入ってくることでしょう。
損益計算書(P/L)とは?
損益計算書とは会社の経営成績を表す決算書の1つです。
経営成績とは会社が事業活動を行なってどれだけの利益を稼いだかを表したものになります。
学生時代は学期末になると通知表をもらっていましたが、損益計算書は「通知表の会社版」とも言えます。
企業の損益計算書を見ると難しい単語や金額などが羅列されていますが、損益計算書の構成は基本的に「収益」と「費用」の2つのみです。
また、損益計算書は英語で「Profit and Loss Statement」(P/L)と言われますが、文字通りProfit(=収益)とLoss(=費用)のStatement(=計算書)という意味になります。
そして、損益計算書が難しそうに見えるというのは収益の内訳項目と費用の内訳項目がルールに従って並んでいるからであって、そのルールを押さえれば何も難しいことはありません。
それでは損益計算書のルールについて解説していきます。
損益計算書のルール
損益計算書を理解する上で押さえておきたいルールはたった2つだけです。
その2つのルールがこちらになります。
- 収益 ー 費用 = 利益※
※収益 < 費用の場合は損失 - 上から順に経常的な項目が並んでいて、下にいくほど臨時的な項目が並んでいる
どうでしょうか。
とてもあっさりしています。
ではこの2つのルールを意識しつつ、まずは損益計算書を究極に簡素化したものを見てみましょう。
これがすべての損益計算書の原型になります。
次にこの中に損益計算書の項目を当てはめてみたいと思います。
先程のものと収益・費用・利益の色が対応しています。
最後に、細かい項目を入れて体裁を整え、損益計算書を完成させます。
各項目の意味は何であれ、これで損益計算書の大枠はつかめたと思います。
それでは次に損益計算書にある各項目の中身を見てみましょう。
損益計算書の各項目の中身を見てみよう!
売上高
- 本業で得た収益
単純に商品やサービスが販売されて得た収益など
売上原価
- 「売上高」を得るために直接的にかかった費用
ラーメン屋であれば1杯作るための材料(麺、スープ、野菜など)
販売費及び一般管理費
- 「売上高」を得るために間接的にかかった費用
ラーメン屋であればお店を運営するための従業員への給料や広告費など
営業外収益
- 本業以外の活動から経常的に発生する収益
株式の配当金や売却益、家賃収入など
営業外費用
- 本業以外の活動から経常的に発生する費用
銀行からお金を借りている場合、支払う利息など
特別利益
- 本業以外の活動から臨時的に発生する収益
不動産の売却収入など
特別損失
- 本業以外の活動から臨時的に発生する費用
地震や台風などによって建物が破損した場合に被る損失など
売上総利益
- 売上高 ー 売上原価 = 売上総利益
売上総利益はいわゆる「売上 ー 原価」で出てくる粗利というやつです。
営業利益
- 売上高 ー 売上原価 = 売上総利益
- 売上総利益 ー 販売費及び一般管理費 = 営業利益
営業利益は本業で稼ぎだした利益になります。
経常利益
- 売上高 ー 売上原価 = 売上総利益
- 売上総利益 ー 販売費及び一般管理費 = 営業利益
- 営業利益 + 営業外収益 ー 営業外費用 = 経常利益
経常利益は本業以外の事業活動全体で稼ぎだした利益になります。
税引前当期純利益
- 売上高 ー 売上原価 = 売上総利益
- 売上総利益 ー 販売費及び一般管理費 = 営業利益
- 営業利益 + 営業外収益 ー 営業外費用 = 経常利益
- 経常利益 +特別利益 ー 特別損失 = 税引前当期純利益
税引前当期純利益は本業とは全く関係のない収益・費用を含め、全ての活動の結果稼ぎだした利益になります。
税引後当期純利益
- 売上高 ー 売上原価 = 売上総利益
- 売上総利益 ー 販売費及び一般管理費 = 営業利益
- 営業利益 + 営業外収益 ー 営業外費用 = 経常利益
- 経常利益 +特別利益 ー 特別損失 = 税引前当期純利益
- 税引前当期純利益 ー 法人税等 = 税引後当期純利益
税引後当期純利益は最終的な利益から税金を引いて残った企業の取り分です。
この利益を会社で溜め込むのか、株主に配当として支払うのかなどの方針が株主総会などで決定されます。
最低限、損益計算書のどこを見ればよい?
損益計算書には様々な項目がありますが、どの項目を見ればその会社の収益性の判断ができるのでしょうか。
本記事では最低限確認して欲しい2つの指標をご紹介します。その2つとは以下の通りです。
- 営業利益
- 売上高営業利益率
営業利益
1つ目は営業利益。
なぜ見るべきかというと、営業利益は本業で稼ぎだした利益だからです。
本業というのはその会社が力を入れてメインで活動を行なっている事業になります。
つまり、会社の経常的な活動であるため日々の成果がもろに現れるということです。
一方、営業外収益・費用及び特別利益・損失は「たまたま発生した感」が強いため会社の事業活動とは関係性が薄いといえます。
したがって、営業利益は会社の収益性を見る上で重要な判断指標になるというわけです。
売上高営業利益率
2つ目は売上高営業利益率。
売上高営業利益率とは以下の式で表されます。
売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高
つまり、売上高営業利益率は「売上高のうち、どれくらい営業利益を残せたのか」ということを表します。
営業利益の金額が大きいことは褒められるべきですが、当然会社の規模によって良いか悪いかの基準は異なります。
そこで売上高営業利益率のようにパーセンテージで表すことによって規模に関係なく優劣を判断することができます。
では、売上高営業利益率はどれくらいであれば良いのか?
これは業種によっても企業の成長段階によっても本当に異なります。
なので売上高営業利益率の業種平均をまとめました。
こちらを参考にしてみてください。
参照元:令和1年企業活動基本調査速報-平成30年度実績-(経済産業省)
まとめ
損益計算書は会社の経営成績を表すもので、「収益」と「費用」の2つで構成されています。
基本的に上から順に経常的な項目が並んでいて、下にいくほど臨時的な項目が並んでいるのです。
損益計算書においては本業の稼ぎである営業利益が重要指標とされていて、会社の規模を均一化した売上高営業利益率も一緒に確認すると、収益性の判断に役立ちます。
本記事を参考にぜひ実際の企業の損益計算書を眺めてみてください。
また、損益計算書の読み方についてはこちらの記事で解説しているので合わせて確認してみてください。
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なお、貸借対照表・キャッシュフロー計算書についてはこちらを確認してみてください。
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